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薄暗い部屋の中に一人、少年が座りこんでいる。
辺りには折り紙で作った紙飛行機や様々な本が、少年を取り囲むようにして散らかっている。
「ねぇ、どうして紙飛行機は飛べないの?こんなに立派な翼が付いているのに…
もっと遠くへ行けるはずなのに」
少年が寂しそうに呟いた。
すると、近くにいた髪の長い着物の女性が、紙飛行機を一つ拾い上げた。
「それは何か足りないものがあるから――――あなたもね」
女性の言葉に、少年は訝しげに首を傾げる。
「僕も?」
「そう」
「“足りないもの”って?」
「それは、あなたが見つけなければならないもの」
その言葉を聞いて、少年は眉を顰める。
「独りの僕にできるかな…」
「大丈夫。私も手伝うから。それに――――」
女性は、そこで一息おいて少年をしっかりと見つめる。
「いつか、あなたを助けてくれる人が目の前に現れる。だから、耐えて。今は…」
女性は手に持っていた紙飛行機をそっと飛ばす。
「耐えて、生きて。いつか来るその日まで…」
紙飛行機は、開いた障子の隙間から外に向かって飛んで行く。
「あなたは独りなんかじゃない。ね?――――。だから…」
紙飛行機は光の中に吸い込まれるようにして飛んで行った。
障子の開いた隙間から入る風が、少年の髪を揺らす。
射し込む光は、まるでその先に希望があるかのように光輝いていて眩しくて――――――。
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