signal Ⅰ:Encounter of monochrome-白と黒の邂逅-

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――――――今から約三十年前に突如起きた災害。 それは、人ならば誰しもが持っているであろう嫉妬や憎しみといった負の感情。 それに似たものが黒い霧のような形を成して、各地から溢れ出したのだ。人々はそれを“負”と呼んだ。 負は自然や人々を蝕み、やがて反乱や内戦、暴動などが各地で勃発するようになった。 今や他国にも負が影響し始め、世界ぐるみの大問題となりつつあった。 そんな混乱する世界を治めるため設立されたのが、このストーロジ学園。 世界最高峰組織機関と呼ばれるこの学園は、“魁騎”と呼ばれる異能力者達を集め、育成し、負の浸食から世界を救う騎士を育て上げる――――――それが、この世界に施された苦肉の策であった。 魁騎の能力は実に様々で、一族で受け継がれるものもあれば、何かのきっかけで発現することもある。そんな魁騎達をいつでも受け入れられるように、この学園には普通の学校にあるような入学式などは存在せず、能力を得た者から自主的に学園に通う、というシステムをとっているのだ。 学年も普通の学校とは少し違った分け方をしていて、17~22歳までは高等部、16~13歳は中等部、その下に初等部、幼等部と続いていて、幼年期から小中高大一貫となっている。 そんなこの学園で重視されるのは能力や戦闘力の優秀さで、クラスも学年ごとの能力別にSからCまでのクラスに割り振られる。 正式な入学の前にとり行われる厳密な審査のもとクラスが決められるのだが、入学後すぐのテストの結果によってはクラスが変わってしまうこともあるらしい…。 ――テストって、どんなのだろう…。 ――実技じゃないといいな。 そんなことを考えながら空を見上げると、小さな物体がゆっくりと飛んでいるのが目に留まった。 ――また…、紙飛行機…? 少し前に見たばかりだと言うのに…。こんな短時間に紙飛行機を二つも見るなんて、十五歳の少女にとっては滅多にない事で何だか新鮮であり、不思議な感覚になる。 辺りを見回すと、近くの木の上に人影が座っているのを見つけた。 ――もしかして、あの人が…? よく見ると、手に紙飛行機を持っている。 好奇心がそそられるが、ふと腕時計を見ると時間が危うかったので先を急ぐことにした。 ――まぁ、ここの生徒なら、またいつか会えるかもしれないしね。   ▲▽
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