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「白陽 皐(しらひ さつき)です。よろしくお願いします!」
教室が生徒達の拍手の音に包まれる。入学時の一大ベント、自己紹介。慣れていなければ、かなりの緊張を要するものである。
――緊張してちゃんと言えるか心配だったけど、上手く言えてよかった…!
心の中で小さくガッツポーズをして、思わず笑顔になる。
「なぁ、あの子可愛くね?」
「あぁ、俺けっこう好み」
サツキについて、生徒たちがこそこそと評価を言い合う。サツキ本人には、全く聞こえていない様子で気にもしていないようだ。
「それじゃあ、白陽さん。あなたの席は窓際の一番後ろの右側ね」
サツキの隣に立ったこのクラスの担任である女教師が、席の場所を伝える。
「はいっ!」
サツキは元気よく返事をするが、その瞬間、賑やかだった教室内に一気に不穏な空気が流れる。
「おい、あの席ってたしか……」
「だよね、かわいそうに」
「マジかよ…。あの子のパートナーって……」
先生に伝えられた席に行むかう途中、ボソボソと話す声が聞こえた。
――どうしたんだろう…?
少しだけ聞きとれた会話の内容からして、あの席に何かあるのは明白だった。
――ここか…。
席に着くと、となりの席が空いていることに気付く。ここの学校は二人一組で一つの長い椅子と机を使う仕組みのようで、例を挙げるならば大学の作りに似ている。
周りを見ると、隣が空いているのは自分の席だけのようであった。
――隣の席の人は休みかな…?
――まぁ、来た時に挨拶すればいいか。
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