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ライナさんに案内をされて歩くこと数分。
僕たちは扉の前に立っていた。
「この先に長男はいるんですね」
「ええ、いるわよ」
僕の問いかけにそっけなく答えるライナさん。
一秒でも早くこの空間から離れたいといった様子だ。
だけど、今の僕にはライナさんのそんな些細な変化を気にする余裕なんてなかった。
だってようやく会えるんだ長男に。
会ったらまず最初に謝りたい。
こんなことに巻き込んでしまったってことに。
そして、次に感謝をしたい。
ダンジョン攻略の時に僕を守ってくれたことに。
それから・・・
「ねぇ、ボンボン」
僕が考え事をしていると、ライナさんが僕のことを呼んだ。
「私もう行くから、私がいなくなったら扉を開けてくれない?」
「何でですか?」
なんともおかしい要求をされたのでそれについて聞いてみると、
「今のあいつは見ていたくないから・・・」
これまたよくわからない返事をされてしまった。
もしかしたら知り合いなのかな?
そんな予測を立てているうちにライナさんは扉からどんどんと離れていく。
僕はよくわからないままにその後姿を目で追っていると、突然思い出したかのように立ち止まり。
「念のためにこれだけは掛けておくわね」
とブツブツと呪文を唱え始めた。
なんとなく聞き覚えのある呪文だったが、どうやら防御力を強化するもののようだった。
なぜこんなものを僕に掛けたのか分からなかったが、呪文を唱えたライナさんはこう言った。
「いい。この先で何を見ても絶対に取り乱さないでね」
そして、とうとうライナさんは僕の目の前から消えていった。
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