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扉に手を掛ける。
長男への罪悪感のせいかその手が若干強張っているのが感じられた。
けど、そんなことでいちいち歩みを止めてはいられない。
僕は意を決して扉を開けることにした。
だが、扉は
「グガアアァァァ・・・」
地を揺るがすような雄たけびによって止められた。
いや、僕自身が止めたんだ。余りの恐ろしさに。
それに気づいたときには全身が汗によって濡れていた。
どういうことなんだ?
ライナさんはここに長男がいるといっていた。
いくらあの人でも長男がいるといって僕を魔物のいる部屋に連れてくるなんていうタチの悪いことはしないだろう。
そう思いたい。
それに僕はニスの奴隷であいつ的には金づるだ。
そういう扱いの僕を危険な目に合わせたらいくらライナさんでもニスの怒りを買ってしまう。
そんなあほらしい目に合うのが分かっていてこんなことをするわけがない。
ということは考えられる可能性は2つ。
長男が魔物と同じ部屋に入れられているのかあの雄たけびが長男のものかだ。
前者はそれはそれで長男が心配だけど、彼のことだし大丈夫だろう。
問題は後者だ。
あの長男があれほどの声を上げるなんて想像が出来ない。
彼の身に何かあったとしか考えられない。
僕はなけなしの勇気を振り絞り、すっかり縮み上がってしまった体に鞭打って扉を開けた。
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