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扉を開けた僕の目に映ったもの。
僕は最初、それが巨大な芋虫だと思った。
巨大な芋虫が長男の左腕に食いついてのたうち回っている。
そう思ったんだ。
でも違った。
違ったんだ。
よく見ると長男の肌の色と全く同じ色をしているその芋虫は、長男の右腕よりも一回りも二回りも大きい彼の左腕だったんだ。
「長男!!」
僕はどうしたらいいかわからず、ただその場で叫ぶことしかできなかった。
足は恐怖からか驚愕からか、何の感情からなのかは分からないが、地面に縫い付けられたかのように一歩も彼の下へ踏み出せずにいた。
思考はショートでもしてしまったのではないかと思うぐらい真っ白で、条件反射のように叫ぶしかなかったんだ。
だが、そんな考えなしの叫びにも意味はあったんだろう。
「マ・・・マスター・・・」
先ほどから獣のような雄たけびしか上げていなかった長男の口から理性のこもった呟きが漏れたのだから。
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