第2話 孤児院

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 ちらりと視界の隅に映るのはクルトとネリーさん。彼らも同様に慄然として恐れ戦(おのの)いているようだ。 「うそ…どうして、あれが…」  彼女の口から、恐怖の感情と共にぽつりと言葉がこぼれた。その目線は一点に向けられている。  つられるようにしてその先を見てみると、人の形をした巨大な影が蠢いていた。  …いつからあそこに存在していた!?あそこは孤児院の外、平野が広がっていて何もなかったはずだ。  突然、現れたのか?何の予兆も無かった。  突如出現した巨人はこちらに向かって、一歩一歩、大地を踏みしめて歩んでくる。  ゆらりゆらりと緩慢に動く巨人であるが、その遅さがかえって恐怖を駆り立てる。  ひとえに、逃げ切れないという絶望感が、奴の行動によって増幅されているような気がした。 「京平、クルト!こっちに!」  『俺』達の腕を引っ張って逃走を試みるネリーさん。行き先は何処へ。  そう思っていると、あろうことか、彼女は奴が移動しているのと同じラインを走ろうとする。  何を考えている!?  奴は『俺』達では無くその先にある何かを見ており、そこに向けて一直線に進行しているようだ。  普通、この場合は奴のラインから離れて遠くに移動すべきだ。
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