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走っている内に、徐々に巨人との距離が近まるのが分かる。一見すると鈍重そうだが、その進行速度はかなり速い。
息が上がる。足もふらついてきた。だが、止まることは許されない。
後ろでは、何かが壊されるような、精神的にもよろしくない音が聞こえ続けている。
奴の通り道にある建物が立て続けに踏み潰されているのだろう。
後ろを振り返りたくもなかった。見ればたちまち『死への恐怖』という感情そのものに飲み込まれてしまいそうだったから。これは、直感的に『俺』も理解していることだろう。
しばらく走っている内に、石畳が広がる敷地にたどり着いた。
その時、ふと視界に巨大な石碑が飛び込んできた。それは敷地のちょうど中央に位置している。
その石碑は不思議な雰囲気を漂わせていた。
今にも崩れ落ちそうな不安定感は見る者の心を掻き乱す程のものであるが、それと同時に絶対的安定を感じさせるという、あからさまな矛盾。
おかしなことを言っているようにも思われるが、これが実直に感じられたのだから仕方が無い。
存在と崩壊、その均衡を絶妙に保つ石碑。それは見る者の心を捉えて離さない、妖しい魅力を放っている。
ネリーさんは『俺』達を引き連れ、その石碑の先にある小屋に隠れた。
おいおい、本当にここでいいのか?
クルトも同様に疑問を感じているようだ。
だが、不安でしかないが、ここはネリーさんを信じるしかない。
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