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はぁ…。あんな恐怖体験そうそうするもんじゃないよな…。
思い出したくなくても、気付けば脳裏で幾度と無く再生される惨劇。
あいつ、何がしたかったんだろ。
石碑を殴りつけて。なんか黒い気体を回収して。そして消え去った。
だいたい、あの黒いモヤモヤってなんなんだ?
そして、ネリーさん、彼女は何を知っている?
疑問は疑問を呼び、心は情報の洪水に溺れて行く、そんな気がした。
孤児院を巨人が荒らしたが、他の子供達は大人がきちんと退避させていたようで、全員無事だったらしい。
これから過ごす孤児院の仲間達、彼らが無事であったのは俺としても何よりである。
あれはおおよそ昼下がりの頃のことで、今は夕暮れ。
暫くは皆が暗い雰囲気だったが、荒らされた孤児院を元に戻す作業の中、体を使うことで気が紛れたらしい、今はだいぶん明るくなった。
日が沈んでしまったので、作業は中止、晩ご飯を食べることに。
皆が同じ大きな円卓に揃い、次々とそこに料理が運ばれる。
ここは全員で20人程の大所帯であり、その量も並外れていた。
席に着いてぼけっとしていた『俺』だったが、ある変化に気付いた。
「ねえねえナルゥ、あのひとだぁれ?」
『俺』が話しかけているのは、朝に見た栗色のショートカットの幼女、ナル。
「あのひと?えっとね、たまにきてるおじさ…」
「お兄さんだから。これでもまだまだ20代!」
ナルが何かを言いかけた時、知らない男性がサッとこちら側に近づき、ナルの口を大きな手で塞いでそう言った。
「俺の名はベネディクト=グリム。ここを手伝いに来てるんだ」
目の前の男性は、ちなみに年は27歳な、と後ろに付け加えた。
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