第2話 孤児院

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 彼は自棄になって、席の近くにある酒瓶に手を伸ばそうとしたが、その隣の赤髪の女性に手を掴まれて阻止された。 「さすがに今は駄目よ。ね?」  その女性に凄まれたので、完全に沈黙するグリム。  その女性とはエーデルさんの事である。『憤怒』の名(?)は伊達ではない。  そして見た目に反してグリム弱えぇ…。  食事が始まってから、周りをいろいろと観察してみた。  ゆっくりとよく噛んで食べる『俺』だったが、他の子供は皆がっつくように食べ物にありついている。    特にナルの食べっぷりは壮観の一言に尽きる。『俺』と同い年なはずだが、その量は成人男性に匹敵している。  あの小さな体のどこに食べたものは行くのだろうか。最早人体の神秘すら感じる。  食事が終わり、ごちそうさまの号令。  『俺』は三歳児だから既に眠気は限界だったので、寝室に直行。敷いてあった布団にダイブ、眠りの体勢に入る。  今日の時間を振り返る間もなく、すぐに意識は遠のく。  長い長い、それでいて濃密な時間だったな、と俺は最後に心に独りごちた。
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