第3話 Dialogue

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 うーん…、暴走か…。それはそれで色々な種類が有るけどな。  今は『力』の話してるし、例えば、身に余るほどの力を手に入れた主人公が道を踏み外す、っていうのは読んだけど。 「いきなり絶大な力を与えて俺が壊れることを避けるためですか?」  心がぶっ壊れたんじゃあ、その役割とやらは果たせないし。 「確かにそれも一理あります。しかしそんな理由だけで貴方は納得できますか?今まで読んできたものに影響を受け、寧ろ力が与えられるのが当たり前だと思っている貴方が」  確かにな…。  しかも単純に『一度に与えられる力が大き過ぎる』のがいけないならば、徐々に力を大きくすればいい、という話に落ち着いてしまう。  だが、神様はあくまで俺を『普通』にしかするつもりはない。  何が目的なんだ?  色々な事を、小説の例を引き合いに出しながら考える俺。その間、神様は俺を何も言わずに見続ける。俺が考えつくのを待っているようだ。  数分が経過した頃だろうか。結局何も思いつかず、下がっていた視線を上に向け、降参とばかりに神様と目を合わせる。  神様は俺の意を汲み取り、答えとなる言葉を朗らかに紡ぐ。 「私は貴方に、『自分の力で』一歩一歩上っていって欲しいのです」  その一言は単純明快、しかし俺の心に明らかで高らかな響きを以て浸透する。 「私が如何に貴方に何かを授けようと、それは貴方にとって所詮"借り物"でしかありません。勿論最初はそれに大いに満足するでしょう。しかし時が経てば、必ず己の存在意義が揺らいでしまいます。何をしようと『これは他人の力でしかない』と…」
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