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ぽかぽかとした、心地よい春の陽気の中。
真新しい制服に身を包み、私、天川鈴音は、自宅のある高級マンションを出る。
まだ眠い目を擦り、歩きながら大きく伸びをする。
「ん、あーっ!!」
すると、右隣で歩く人物がしかめ面のまま、低い威圧するような声で呟いた。
「…叫ぶな、りぃ。朝からうるせぇな」
「叫んでないし、酷いなぁ。ほんと輝瑠って、朝は機嫌が悪いよねー」
「んなこと、俺に言われても知るか…」
大きな溜息をつき、そっぽを向く背の高い男。
彼は、水野輝瑠。
私とは、幼馴染みで腐れ縁。
漆黒の髪と瞳に整った顔立ちで、背は187㎝ととても高く、155.6㎝の私はいつも見上げて喋る。
今見える横顔だけでも、ものすごく整っている。
輝瑠みたいな男性を世間一般的に“イケメン”って呼ぶんだろうな。
2人並んで歩く姿は、端から見ればカレカノに見えたりするのかもしれない。
でも残念、一切そんなことないんだよね。
訳あって一緒に住んでるけど、今は学校に送ってもらってるだけだし。
昔からあまりにも身近すぎて、今さら輝瑠が彼氏なんて、ちょっと想像できない。
とはいえ、高校生にもなって同い年の子に学校まで送ってもらうなんてどう考えても変だから。
そう思って、自分ひとりで行けるって言ったのに、心配だからって押し切られてついてきちゃった。
まったくもう、過保護にも程があるよね。
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