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「はじめまして、天川さん。1-A担任の上野です。よろしく」
「天川 鈴音です。よろしくお願いします」
あ、よかった。
優しそうな人だ。
不安ばかりだった中で、少し安心できたことが嬉しくて、上野先生ににっこりと微笑みかけた。
…あ、そろそろ行かなくちゃじゃない?
「先生、そろそろ行きましょう?」
一度視線を鞄に移し、また先生を見た。
あれ?
「先生、風邪でもひいてます?顔、真っ赤ですけど」
少し俯いている先生の顔を覗き込むようにして言うと、少し目を見開いてふいっと逸らされた。
大丈夫かな?
「い、行きましょう、天川さんっ。失礼しました」
まるで吐き捨てるように早口で言って、さっさと出ていってしまった。
えっ!?
どうしたの!?
「えっあ、じゃ、またねー!!」
私もそのあとを急いで追う。
「ははっ。変わってないなぁ、無意識なところ…」
という理事長もとい雷斗の呟きは、私には届かなかった。
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