目覚める

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不思議と男の中には何の感情も浮かんでこなかった。 恐怖や後悔、絶望などのマイナスな感情が出てこない。 今心にあるのはただただ全てを落ち着かす冷静。 男は肉塊を見つめる。 地獄絵図の部屋にポツンと置かれた一つの塊。 まるで子供がゴミで作った山のようだが見える物は信じられない。 赤い肉から所々見える白い骨。 そして時折見える手、足、髪、胃、腸、脳がまるでデコレーションのように重ねられている。 てっぺんには眼球がこちらを向いていた。 眼球からは何の力も感じない。 男の目線は自分自身にも向かう。 裸の身体中に血が服のように付いている。 ほぼ身体の見える部分は赤黒い血で覆われていた。 両手は紫色に腫れ上がりあちこちから折れた骨が飛び出ている。 だが男は不思議と痛みを感じなかった。 数度振ってみたが何も感じない。 どうやら完全に感覚が麻痺してしまったようだ。
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