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男はただただ力の限りに肉塊を攻撃し続ける。
殴り、蹴り、踏み、叩き、折り、千切り、壊し、粉砕した。
まるで赤ん坊が目の前のおもちゃを自分の欲望のままに、全力で遊ぶように。
男は自分の狂気のままに自分の力をぶつけ続けた。
「ビチャ!」
何度目かの返り血が跳ねる、そしてその返り血は。
「ピチ」
男の顔にかかる。
勿論のこの返り血が初めてではない男の顔は既に血で顔を洗ったように血まみれだった。
しかしまるでたった一粒の雨がダムを決壊させたように男の意識は一気に暗い精神の底から浮かび上がってきた。
「………………………あ……れ」
意識が戻り頭が覚醒した。
さっきまで暗闇しか見えていなかった眼が目の前の光景を映し始める。
「う……あ」
男の脳が全てを認識し始める。
そして理解をする。
自分がやった事をそして犯してしまった罪。
いや人間が受ける罪などという生易しいものではない。
この地獄絵図。
そしてこの光景を作った自分。
はっきりした意識で両手を見る。
しかし両手は人の手の形をしていなかった。
紫色に変色した手からはあちこちから折れた骨が飛び出している。
その両手の向こうにあるのは。
「………○○?」
女の名を絞り出した。
だが目の前にあるのは明らかに人間ではなかった。
「お……あ…………オォォォォォォォォォォォォォォォ!」
男の絶叫がこだまする。
自分の顔をかきむしる。
そこで男の意識は飛んだ。
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