ある冒険家の手記

3/5
前へ
/5ページ
次へ
密林に入った私がまず見たものは、槍を構え、こちらを威嚇して来る原住民の姿であった。 上半身裸に腰布を纏った彼らの姿はパプアニューギニアなどの少数部族に似ていて、ここが日本であることを錯覚させる。 そんな彼らに私は思いきって声をかけてみることにした。 「あ、あの……。」 その瞬間だった。 まるで動きが見えなかった。 気づいたら、私の喉元に槍が突き付けられていた。 「トチギ?ノントチギ?」 日本語ではなかった。 これはグンマー語と呼ばれる言語だろう。 これは私が栃木の者か、違うかの確認だろうか。 私は生まれも育ちも茨城である。栃木の民と間違われるというのは少し腹が立った。 「私は茨城県民だ。つまり君達のいう所のノントチギだ。」 私の声は震えてはいなかっただろうか。 そんな不安が頭の片隅をよぎる。 なんせ今私は喉元に刃物を突き付けられた状態なのだ。いくら私でも怖いものは怖い。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加