black thread

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「ん?何だ?」 朝、目が覚めると、中指に黒い糸が巻かれていた。その糸の先は、玄関の外へと続いていた。 「ガチャ!」 玄関の扉を開けると、糸はまだまだ続いていた。俺は、なぜだが糸の先が気になり、辿った。いつもの街並みを辿った。電車に乗り、知らない街並みを辿った。不思議とどうやら、この黒い糸は、俺以外の人間には、見えないようだ。そのお陰で、どうやら俺のそんな姿は、回りから随分と滑稽に見えているようだ。 「ちょっと待ちなさい。」 俺が黒い糸を辿りながら、その知らない街を歩いていると、露店の占い師の老婆が話し掛けてきた。 「何か?」 「その黒い糸を辿るのは、おやめなさい。」 「見えるのか?」 「ああ、見える。」 「分かるのか?知ってるのか?この黒い糸の事を!」 「ああ、知ってる。」 「教えてくれよ!この黒い糸は一体何なんだ!」 「それは、運命の黒い糸。」 「運命の黒い糸?運命の赤い糸じゃなくてか?」 「似て非なる糸じゃ。」 「つまりは、この糸の先に俺の運命の人がいるってのか!」 「待ちな……行ってしまった。話は最後まで聞くものさ。」 運命の黒い糸の先にいた男に、俺は殺された。
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