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「ちょっと待ってよ……なにそれどういう事?私が……今ここにいる私が、もう死んでる?」
『もう死んでる』
その言葉を言って途端に何故か口の中が乾いて、ひりひりと痛む喉に唾を流し込む。
いやいや、あり得ないでしょ?
そんな事急に言われても信じれる訳ないって。
混乱する私に俯きながらもスィンは目を向けていた。
その瞳に浮かんでいるのはーー悲哀。
「……やっぱり、困惑されて……ますよね?でも……大丈夫、です。わたしがちゃんとーー湊さんの魂を、在るべき場所へ……導きますから」
言いながら彼女は足元に落ちていた真っ黒な鎌を持ち上げる。
スィンの手の中にある鎌がそんな私を冷たく一瞥したように見えた。
☆
そうして今私の目の前にはーー死そのものみたいな暗い闇色の鎌の刃が迫っていた。
思考が停止しているみたいに、ただそれを眺めている自分がいる。
身体は動かないーーいや、動かそうともしてない。
何でだろうな……間違いなく死ぬって分かってるのに、それを何とかしようともしてない。
さっきのもう貴女は死んでますよ宣告を受け入れちゃったって事?
まあ、今でも疑ってるけど死神なんて出てこられたら……信じるしかないのかな。
受け入れるの?本当に?
いやいや、受け入れるとか受け入れないとかの問題じゃなくてさ……。
どうしようもないじゃない?
じゃあさ、と頭の中のもう1人の私が私に首を傾げて尋ねた。
貴女さーー未練とかないの?
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