3人が本棚に入れています
本棚に追加
その言葉を聞いた瞬間、頭にかかっていた靄みたいなモノが一気に晴れたような気がした。
未練……やり残した事、まだやってもないけどやってみたかった事ーー
そんなの……数え切れないくらい、たくさんあるに決まってるじゃない!
そんな思いが胸の中に膨らんで、もやもやした気持ちをそこから追い出した。
諦めるなんてそんな事、
ーー出来る訳、ないっ!!
迫り来る刃を反射的にしゃがみこんで避した。
頭のすぐ上をヒュンッ、と風を切る鋭い音と黒光りする凶悪過ぎる凶器が通り抜けていく。
「ーー……へ?」
突然切り裂くべき目標が消えて動揺したのか、スィンの手の中から鎌がすっぽ抜けた。
勢い余った鎌はそのまますっ飛んでいき、空間の壁に突き刺さった。
しばらく呆然とその鎌を眺めていたスィンは、やがてその表情のままゆっくりと私を振り返る。
「えと、えっと……み、湊……さん?どうして……?」
「……じゃない」
「ふぇ?」
「いきなりもう死んでるとか魂を導くとか言われて鎌なんか向けられても……理解も納得も、出来る訳でしょっ!」
「そ、それは……」
「それにもしそれが本当だったとしても、私にはまだやり残した事とかが山ほどあるの!」
スィンの言葉を遮って、ほとんど睨み付けるように彼女を見据える。
「だから私はそんなの認めないーー認められる訳ないっ!」
だんっ!と足を踏み鳴らしながら私は高らかに言い放つ。
いくら死神だからって人様の人生に勝手に幕を降ろしていい何てルールでもあるっての?
ううん、そんなのあっていい訳がないでしょっ!
最初のコメントを投稿しよう!