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「くっ、この……えりゃっ!!」
ムキになってめちゃくちゃに鞄を振り回すけど、その度に凜夏は軽やかな足さばきでそれをよけ続ける。
くっ、さすがは武道家の娘……伊達に父親から鍛えられてるって訳じゃなさそうねっ!
でも、所詮は凜夏だって今時の女の子ーー
「これで……どうっ!?」
私は鞄をまさぐって、取り出したそれを上へと放り投げた。
「ーーっ!」
宙に舞うそれを見た瞬間、ぴたりと凜夏の足が止まる。
彼女の見開かれた瞳はそれーー人気アイドルグループ・『Amber Tear』の秘蔵お宝写真に釘付けになっている。
そして私はその隙を見逃す事なく完全に注意が削がれた下から掬い上げるようにして鞄を振り上げた。
「もらったあああぁぁぁぁぁーっ!!」
完璧に意表を突いた、渾身の1撃。
確かな手応えも、間違いなくあった。
にも、関わらずーー
「……ふぅ。本当に危ない人よね、沙耶って」
私の目の前には、悠然と立つ凜夏の姿があった。
「う、嘘……でしょ?そんな、どうやってーー」
ほとんど茫然としながら見てみると、私の渾身の1撃は折り畳まれた凜夏の脚によって身体への直撃を阻まれていた。
「それにしても沙耶、ちょっと私を見くびりすぎてるみたいね?あの程度の事で、私の気が逸れると思ったの?」
「………………まぁ、ね」
カッコいい台詞だけど、片足で立ったまま必死に両手で写真を広い集めた状態で言われても説得力はないんじゃない?
「それにこれ、パソコンでプリントアウトしたヤツでしょ?本物よりもブレてるし」
そんなのこんな短時間で見抜けるなんて、貴女どれだけミーハーなのよ!?
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