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そんな私の内心の突っ込みなんて知るはずもなく、凜夏はてきぱきと制服のポケットに写真を詰めていく。
「何にしても、これで分かったでしょ?私にこんな攻撃なんて無意味ーーあっ、」
不意に強い風得が吹くのに合わせて、得意気だった凜夏の言葉が途切れる。
どうかしたのかと髪を押さえつつ彼女の視線をたどってみると、写真が1枚風に流されているのが見えた。
写真はひらひらと風に遊ばれるように飛んでいき、道路の反対側に落ちていった。
「そ、そんな……よりにもよって、HARU様が飛ばされる……なん、て」
凜夏はがっくりと地面に膝をついて、うわ言のように「あり得ない……」と繰り返す。
「えっ、ちょっと……おーい、凜夏さーん?」
目の前で手を振ってみたり、肩を揺すったりしてみたけど、凜夏は固まったまま動く気配がない。
ああもう、たかがコピーの写真くらいでどれだけショックを受けてるのよ?
「……はぁ、仕方ないわねっ!ちょっと待ってなさいよ、私がパッと取ってきてあげるから」
「えっ、沙耶……?」
私はぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜながら、凜夏に自分の鞄を投げて渡す。
写真はガードレールと草の間に挟まってるみたいで、何とかまだそこにあった。
ちらっと確認した信号は……よし、まだ赤のままだ。
「凜夏がずっとこんな交差点何かにいたら通行の迷惑何だし……後でちゃんと感謝しなさいーーよっ!」
軽く左右を見て車が来てない事を確認してから、ハードル走の要領でガードレールを飛び越える。
そしてそのまま一気に道路を駆け抜けて、目的地まで辿り着いた。
「よっし、ゲット!」
また風に飛ばされる前に写真を拾い上げて、胸ポケットに入れる。
さってと、早く戻るとしましょうか。
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