プロローグ2:天沢杏奈

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 やがて、ちらほらと同じ学生服を着た生徒が見えてくる。  なかには顔見知りもいて、「お、始業式から夫婦で登校か~?」などという茶々が入ったりして、 そのたびに若干顔を赤くした天沢による制裁が下ったり――なんとも楽しい登校である。  しかしまあ、これを“楽しい”などと言ったらまた後々からかわれ、 天沢からは「熱でもある?」と半ば本気に聞かれるのは分かりきっているので、ここは仏頂面で通しておくのが厄介がない。  ……だいたい、そんな茶々に今更反応する天沢も天沢だ。  俺はそんなこと言われても、適当にあしらっている。  茶々を入れてくる連中に1番効率的な否定は興味を示さないことで、天沢がムキになって反撃するから、未だに馬鹿が後から後から湧き出してくるのだ。  面倒なので、俺は放っているが。  さて、今日も朝からクラスメイトの顔をえぐった天沢は、ふぅ、と1つ息を吐き――さっきまで会話していたのと変わらない表情を、俺に向ける。 「そういえば真一。あんた課題、全部終わってる?」 「当たり前だろう」 「うわマジ? うっそ、真一なら絶対終わってないと思ったのにっ。『面倒だからやらない』の一言でうっちゃらかしてると思ったのに。私の夢を返せっ!」 「勝手に見た夢を返せと言われても」 「ま、夢云々は冗談としてもさ。私あれ終わってないのよね。数学の課題プリント」 「せいぜい担任に怒鳴られてろ」 「うちの担任、結構温厚だから大丈夫っしょ。それより真一~♪」 「手伝えと?」 「分かってるじゃん。さっすが真一。よ、太っ腹!」  ドン! と背中を叩かれる。実は地味に痛い。  それにしても、課題を手伝えか。面倒極まりないが、これくらいは予測できていた頼みだ。  拒否して面倒なことになるよりは、手伝ってやった方が早い。
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