プロローグ2:天沢杏奈

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「お、真一じゃん。おいーっす」 「天沢か。早いんだな」  自分の部屋に鍵をかけたちょうどその時、103号室の扉が開かれた。  そこから姿を見せたのは、俺と同年代の、一目で活発だと分かる女子。 「私は朝練よ。真一こそ早いじゃん。何かあるの?」 「別に、なんとなくだ」 「ふーん。始業式だからハイテンションなんて、あんたのキャラじゃないっしょ」 「当たり前だ。もしそんな奴がいるとしたら、こいつだな」 「あ、なんだ彩音も一緒なんだ。ああそれでか」 「おはよう、杏奈お姉ちゃんっ」 「おはよー」  朝からテンション高めなこの女は、天沢杏奈(あまざわ・あんな)。  さっきも言ったとおり、103号室の住人にして、俺のクラスメイトでもある。  天沢は高校1年生の時、1人暮らしをしたいという理由でこのアパートに来た。  奇しくも俺がここに住み始めたのと同じ時期だった上、天沢のこの性格である。俺たちは間もなく意気投合し、それから1年半が経過、今に至る。 「ねえ真一。私のご飯は?」 「……何を言ってるんだお前は」 「今日って真一の番だったでしょ」 「昨日、“明日は早く学校に行くから朝はいい”って言ったのはお前だろう」 「あ、そっか。ちぇ、もったいないことした。早く起きるなら早く起きるって言いなさいよ」 「アドリブだ」 「アドリブってそういう意味だっけ」 「辞書引け」 「辞書は投げる物っ!」 「投げるな。俺が犠牲になる」  外見の特徴としては、ショートの整えられた黒髪に、程よく焼けた肌。自信に満ち溢れたような輝く目は常に正面を見据え、捻じ曲がるということを知らない。まさしく、わが道を行く! という感じの少女だ。  クラスの男子から言わせれば、十分に「美少女」らしい。少なくとも外見は。  内面は……まあ別に、凶暴とか女王気質とかじゃないけど、典型的な男勝りで、何かと男子を嫌っている面があるので、ちょっとしたことですぐ怒る。そして怒ると怖い。  そして先程の発言で分かるように、馬鹿だ。  生粋の馬鹿。  ありとあらゆる意味で馬鹿。
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