あなたたちのために…さようなら

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それから次の日も学校に通って、土日を利用してあたしは準備をした。 久永さんに言われたのは、国外である人物の調査と犯罪をくい止めること。 穂乃架「長丁場になりそうだなぁ」 しかもそこはイタリア。 めんどくさいったらありゃしない。 別に言葉は問題ない。 日常会話程度なら話せるから。 でも潜入捜査なんて、まだ高校生の、しかも女にやらせるか?ふつう。 って、ぶつくさ言ってても仕方ないか。 穂乃架「しばらく、このバカみたいに広い家ともお別れだな」 どのくらいの日数がかかるかなんて知らないけど、まああの人がやれって言うのならやるしかない。 あんな血も涙もない人でも、一応あたしの祖父なんだから。 穂乃架「行ってきます」 返事の返ってこない家にそう言って、あたしは荷物を持ってタクシーで空港に向かった。 入場手続きをして、しばらくロビーで待つ。 思い起こすのは、彼女たちのこと。 穂乃架「そういえば、結局まだ一度も呼ばなかったなぁ」 退院祝いの時、あたしは崎守さんに頼まれた。 名前で呼んでほしいって。 ーー私、久永さんと本当の友達になりたい!だから、これから名前で呼んでほしいんだ。ね?穂乃架ちゃん いままで誰かを名前で呼んだことなんてなかったから、あのときは気恥ずかしくてまた今度ね?ってかえしたんだっけ? あたしって意外とチキンだったんだなぁ。 そして、最後によみがえるのは………。 穂乃架「やっぱり、相馬さんか」 なんでかはいまいちわかんないけど、あたしはたぶん…。 穂乃架「もっと、一緒にいたかったんだろうなぁ」 なんだかんだ言って、あの人のそばは居心地がよかった。 あたしの本音を言い当てられたときはちょっと腹立ったけど、本当の自分と向き合うきっかけにもなった。 十六夜湊との時も、罪悪感を感じた理由はいまだにわかんないけど、相馬さんの顔が浮かんだのは事実だ。 穂乃架「あのときの理由、知りたかったのになぁ」 まあ、それは生きてここに帰ってきてからでいっか。
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