*狼*

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両手に団子を持ち、幸せそうな顔をした沖田は口いっぱいに頬張る。 頬を膨らませたリスのような姿を見ながら、和泉も注文した甘味に手を伸ばした。 三色団子に抹茶。 甘さを押さえた組合せで、なおかつ量も少ない。 まず大量の甘味が腹に収まり、毎日餡子を飽きずに食べれるのは、何処を探しても沖田だけだろう。 出掛けの土方の言葉を思い返し、そんなことを考えつつ、行儀が悪いと分かっていながらも肘をつき団子を口に運ぶ。 「それだけで足りるんですか?」 「逆にそんなに甘い物を食べて気持ち悪くならない?」 机に目一杯置かれた大量の甘味は、和泉が団子を一本食べる間に、早々に沖田のお腹に収まった様子。 「和泉ったら。質問を質問で返さないでくださいよ」 不満げに言う沖田に二本目の団子に手を伸ばし、一番上の一つを串から引き抜く。 「三食甘味でも構わない、なんて日本中探しても総司くらいしか居ないって。日本人なんだから米食べなよ」 「あはは。だって美味しいんですから仕方ないです」 だとしても今日はかなり少ない方か。 月の初めと終わりでは財布の内部事情も変わってくる。 食べる量が大幅に変化するから、食べる量だけで、今が月のどの辺りか予測は簡単につく。 「総司、明日は行かないからね」 土方みたいに総司の桁外れな甘味代を払う気など一寸たりとも無い。 .
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