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背後での草が擦れる音と気配に気が付いたのか、水面を見つめていた男性が振り返り涼やかな瞳の彼と視線が交わった。
無言で見つめ合うのに気まずくなり、思わず回れ右して走り去ろうとした和泉だが、その行動は優しげな誘いの声に止まった。
「隣、おいでよ」
自分の座る隣を叩いた彼の横へ、おそろおそる歩みを進める。
男性は墨色の着流しを着て、目鼻立ちがしっかりしている。
心地好い風が吹く度に揺れる黒髪は土方に負けないくらい真っ直ぐで綺麗だ。
所謂、美丈夫ってやつ。
少し距離を保って、すとんと隣に和泉が腰を下ろせば、笑いながら彼は口を開いた。
「ん、どうかした?俺の顔なんか、じっと見て」
目を少し細めて頬を緩ませ笑う彼に、ドキリとする。
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