存在しない ≪前≫

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濡れた衣服や学生カバンは、ユ〇クロでの購入時にもらった紙袋に入れた。 少し湿っているが、まぁ二人ともカバンの中身は絞った衣服と空の弁当箱だけなので破れはしないだろう。 「お兄ちゃん、お腹痛くないの?」 「ははは、幸谷みたく胃腸は弱くないからね♪ 雨に濡れたくらい何でもないさ♪」 「それもそうか」 湿った紙袋を持つ浅見兄弟二人は、4階ホールを歩いている。 雨がひどすぎるので、しばらくこのショッピングモールで時間を潰すことにしたのだ。 傘を探して買うのもいいが、あいにくこのあと二人とも用事もなく、言うなれば暇人なのだ。 暇潰しがてら雨が止むのを待ってみる。 吹き抜けの先に見える、天井の大きな採光窓は雨が流れて灰色の空もぼやけ、ドーっという、無数の雨粒に無抵抗に打たれる音が聞こえる。
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