存在しない ≪前≫

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「雨が酷いねー……止むのかな、これ」 「たぶん夕立じゃない? じゃなくても、こんだけ降ってたらそのうち、きっと止むよ♪」 ネガティブな弟と違い、兄はどこまでもポジティブである。 「だといいけど。 でも、止まなかったらどうするのか、考えてる?」 「んー……とりあえず閉館の9時まで待って、そしたら家には母さんがいるだろうし、迎えに来てもらうとか?♪」 「あ、そっか、なるほど」 「幸谷はどう思ってたの?」 「いや、ダッシュかな、と。 お店の軒先に隠れながらさ」 「それじゃまた幸谷お腹壊すじゃん♪」 的確な指摘に幸谷は、確かに、とうなずく。 兄は幸谷に比べて、やはり良く頭が回る。 これで運動神経も良く、性格もいいのだ。 モテない方が可笑しいというものだろう。 「そういえば、クラスには慣れた?♪」 「何、急に」 本当に急な話題だが、幸谷は実は、酷くはないが、一応人見知りである。
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