夏の始まり

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冷蔵庫の扉を開けるが、残念ながらジュースどころか飲みものすら入っていない。 この10年ぶりの猛暑に見舞われた今日に限って家全体の冷房設備がほぼダウン。 どうにかこの暑さを耐え凌ごうと策を考えながら辺りをふらつく。 かろうじで生き残ったのは、小学2年生の時からあるこの扇風機。 扇風機は不穏な音と共に首を左右に振り涼しい風を送り込もうとしているが、すっかりガタがきており全くともって涼しくしてくれない。 窓は全開、再びテーブルの上に置いてあるクーラーのリモコンに手を伸ばしボタンを押して見るがやっぱり全く反応してくれない。 外からはセミの鳴き声が都会の喧騒に負けないほどの五月蝿さで少年の耳を刺激する。 空は雲一つない快晴。この日に海水浴にでも行ってたらどんだけ気持ちが良かっただろうかと少年は思う。思うことしかできない。
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