密室

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カランカラン 拓人さん お勧めのハンバーグ屋さんは よく 二人でご飯を食べるお店よりも とても明るい店内で すごく賑やかで 小さい子供も 美味しそうにハンバーグを食べていた いつも ちょっと緊張しながら 食べていたので 今日は少し安心・・・ 二人で 向き合いながら 食べる食事は 照れ臭いような 嬉しいような あったかい気持ちになる 学校でも 家でも お姉さんキャラでいる自分は嫌いじゃない だけど こうやって 大人の男の人に 優しく包まれているような気分は なんとなく本当の自分のような気がする (幸せだな・・・) なんて 浸っていると 「いい加減 お母さんって 呼んで あげれば?」 ふいに拓人さんが私を見つめる 「今日子さん 頑張って お母さんしてると思うけど?」 幸せな気分から 一気に現実に引き戻される 拓人さんと 今日子さんは すごく親しいというわけではないみたいだけど マスターを通して ちょっと顔見知りみたい 「まあ 俺が口出すことじゃないか」 拓人さんは 私の静かな雰囲気を読み 話しを切り上げた でも 私は なんとなく イライラした気分が治まらない 私は 遠くの家族連れを見ながら 「拓人さん ご家族と このお店 来たりするんですか」と 真顔で聞いた 「・・・ 昔はね」 拓人さんは 一言だけ呟き 黙って コーヒーを飲んだ 私・・・・ なに言ってるんだろ 「ごめんなさい・・・・」 さっきまでの幸せな気分から 一気に 闇の中に沈んでいく気分になる 「いや 大丈夫だよ!なんでも聞いてくれよ(笑)」 拓人さんが わざと明るく振る舞う なんだか その日は おかしな雰囲気のまま 気がつくと帰り道 もうすぐ 家の近く 「あ ここで・・・」 いつもより ちょっと離れた場所で 車を止めてもらう 「え ここで大丈夫なの?」 「もしかしたら お父さんの帰る時間と かぶるかも 知れないから・・・・」 「そうか ごめんな 今日は 急に 呼び出して」 「いえ 私も 逢いたかったから・・・」 「美樹 俺は 本当にお前を愛してるよ 信じてくれるか?」 ギュッ と 右手を掴まれる 拓人さんが 真っすぐ私を見つめる 「私も 拓人さんを愛してます」
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