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刻一刻と迫るその日を、歯がみしながら待つしかないなんて。
せめて一つでも多くの思い出を連れて行きたくて、むやみにはしゃいで見せた。
「……好きだよ」
「何、急に。……ってか今更」
「……なんとなく、かな……」
「変なヤツ」
いつも通りを装っての会話に、疲れたなんて言い訳は、通用しないかな?
「好きだよ……」
*****
ドン、と。突き飛ばされて我に返るだなんて、自分のことながらに情けなくて嗤える。
「な、にすんの……?」
「……好きだよって……言ってんの……」
「い、み分かんない……」
唇に指で触れながら、肩を震わせる様に。
欲情してるなんて知ったら、お前はどうする?
「……好きだ」
「……ゆう、と……」
「好きなんだ、明が……」
零れる声が、自分でも驚くほどに切ない。
「好きなんだ」
「……っ……知らないっ」
逃げるように部屋を出て行く明を、突き飛ばされたままの格好で見送ってから、くつくつと嗤う。
「バカじゃない……?」
ふ、と。
息を吐いてから。
ガツ、と壁を殴った。
「ば、か……ッ!!」
『好きだよ……』
真剣な瞳。
切なくて、愛おしくて、哀しげな声。
何言ってんのと、笑い返せなかったのは、いつものアイツらしからぬそんな態度のせい。
近付いてくる顔を、訳も分からず見つめていられたのは、唇に何かが触れるまで。
唐突に触れてきたのがアイツの唇なんだと悟るまでに、かなりの時間が要った。
「どう、して……っ!」
あの時からずっと、同じ問いがグルグルと頭の中で回っていて。
「どうしてだよ結人っ!!」
あの時からずっと、早いままの鼓動に気付いて、ぎゅう、と胸の辺りに手をやってシャツを握りしめる。
「……どうして……っ!」
どうしてさっきから、お前の笑顔ばかり思い出すんだろう?
頭をちらついて離れないお前の顔が、痛そうに、辛そうに歪んでるのはどうして?
あんなコトされて、傷ついてんのはオレじゃないの?
「……どーしてだよ……」
どうしてお前の方が傷ついたような顔をする?
ズルイよ、お前は。
だけど、でも。
一番不思議なのは。
「……嫌じゃ、ない……」
触れ合った唇が、熱を帯びたように熱いと思うのは、錯覚?
「…………ゆうと……」
……どういう、こと……?
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