act.3

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 ***** 「……あれ? 今日は一人なん? 明くんは?」 「……おはようくらい言えば?」 「おはようさん。で、明くんは?」 「……一緒じゃない時だってあんの」 「……ふぅん……」  納得したようなしてないような顔で呟くのはクラスメートの村田で。なんとなくその目がイタズラに輝いているような気がするのは、たぶん気のせいじゃないだろう。 「ケンカか?」 「……うるさいな」 「図星か」  楽しげに笑ってから、顔つきを改めて低く囁いて寄越すのは 「気ィ付けや。明くんのこと好きなんは……なんも女子だけちゃうからな」  そんな脅し文句で。 「……分かってるよ」 「……ならえぇけど」  いつもの声音に戻って笑うのに、小さく溜息を吐いた。 「…………分かってるに決まってる……」  誰よりもアイツのことが好きなのだから。  バタバタと駆け込んだ教室に、担任の姿はない。  間に合ったようだと、安堵の息を吐くのと同時にチャイムが鳴った。 「おはよぉ明くん。ギリギリやったな」 「ホントだよ。ヤバかった」  はー、と大きな溜息を吐いて、後ろの席の横谷に笑い返す。 「電車下りてからずーっと走っててさー。さすがにキツかったぁ」 「そらそうやろ。いくら駅から近い言うてもそれなりに距離はあるからな」  苦笑しながら横谷の視線の先に目をやれば、今し方走ってきたばかりの道が見える。 「……今日は藤崎と一緒ちゃうかったんやな?」 「……うん。……アイツ先行っててさ」  横谷の口から出た名前に一瞬ギクリとしながら、それでも平静を装ってそう言えば、そぉか、と納得しているようなしていないような声が返ってきて。 「……ま、結人のこと目覚まし代わりにしてるオレも悪いんだけどさ」  無理矢理取り繕った笑いを貼り付けてのそんな台詞に、苦笑する気配。 「ケンカでもしたん?」 「…………ううん」  躊躇った後に首を横に振る。 「なんやその間ぁは」 「……ケンカ、は。してない、から」 「……ほんならどないしたん?」 「……」  問われて、やはり首を横に振って 「いーんだ。……それよりさ、英語の予習やってきた?」  見透かしたような優しい苦笑は、見ないふりで、そんなどうでもいいことを口にした。
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