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「健に聞いた」
「何、を……?」
「藤崎がしょげとったって」
「……」
「どないしたん?」
ん? と優しく覗き込んでくる瞳から、そっと目を逸らす。
「明くーん?」
「…………。……オレは悪くないよ?」
「ケンカかいな?」
「ううん、違う」
「……そしたらなんやねん?」
「分かんないけど。……オレのせいじゃないと思う」
項垂れながらの台詞に、ふむ、と納得してるんだかしてないんだか分からない返事。
「…………──告白でもされた?」
「──っ」
小さな声で投げられた唐突なその問いに、バカ正直に驚いて目を見張ってしまう。
「図星か」
「なっ……なっ…………っ!?」
言葉にならずにパクパクと口を開け閉めすることしかできない自分の前で、そうかそうか、と納得顔の横谷が微笑していた。
「なんでそれっ」
あわあわと驚きながら放つ問いに、横谷が更に笑みを深くする。
「藤崎の気持ちは、あの顔とか雰囲気とか……そういうんで分かってたから」
「うそ……」
呆然と呟けば、嘘ちゃうよ、と付け足して、さっきまでとは違う優しい笑みを向けてきた。
「……嫌やったん?」
「……」
「…………オレが口挟むことちゃうか」
呟いて、ごちそうさま、と手を合わせる横谷を見つめることしかできなかった。
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