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「……なんや。明くんトコ行かへんの?」
「……それ嫌味?」
いつもならいそいそと弁当を持って明のクラスに行って一緒に昼食にするのだが、今日はさすがにそんな気分にならず、自分の席で弁当を広げていたのだ。
「…………えぇの? それで」
「……何が」
「……オレが口挟むことちゃうけどさ……。そんな拒絶しとったら、明くんが仲直りしたい思ても出来へんやん」
「……」
前の席が空席なのをいいことに、椅子を引いて座った健がそんなことを言う。
「……明は……」
「うん……?」
「…………オレのこと許してくんないんじゃない?」
「……そんなん分からんやん」
溜息混じりに呟けば、眉を寄せてそんな台詞を返してくれる。
「……何したん?」
「………………。言った」
「何を」
「………………気持ち?」
「…………──告ったんかっ」
さすがに小声で。けれど十分驚いたらしい顔に、むっつり黙ったまま頷いてみせる。
「え? それで?」
「……さぁ……」
「さぁって……」
「……嫌われたんじゃない?」
ズキズキと痛い胸には気付かないフリで、もくもくと箸を進めていれば
「アカンやろ、そんなん」
そんな真剣な声が聞こえて、落としていた視線を上げた。
「ハッキリせな」
「……」
「藤崎!」
「…………ヤダよ」
「何でぇな!」
「嫌に決まってんだろ!」
思わず声を荒げてから、クラス中の視線を集めていることにハタと気付いて、気まずさに小さく舌打ちする。
「…………フラれるに決まってんじゃん」
何事もなかったかのように箸を進めながらそう呟けば、バシッ、と頭を容赦なく叩かれた。
「ぃった……何する……」
「アホか! ちゃんと聞いてこいや!」
「……健……?」
「そんなん……2人とも嫌やんか……」
「何、が……」
「ハッキリせな……このままずっと、別れ別れのまんまやんか……」
「……」
切ない声に、ズキリ、と胸が揺れて痛んだ。
「……オレは……なんだかんだ言うて……2人が楽しそうにしとんの見るんが好きなんや」
「健……」
「…………やから、ハッキリせぇ。……だいたい、自分もこのままでえぇやなんて……ホンマは思てないんやろ?」
「…………」
「藤崎!」
「…………──分かった」
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