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「……ゴメンな」
「──っ」
「……行こ」
「……うん」
謝る声が切なくて。その顔も瞳も痛いほどに苦しそうで。
息がしにくいような錯覚を感じてから、緩く首を振る。
「…………明」
「……うん」
「……オレ……」
「……うん」
「オレ、は……」
隣を歩くアイツの緊張が感染ったみたいに体が強ばっていく。
「……オレは……」
「………………──オレ」
このまま聞いていると泣き出しそうで。
訳も分からず口を開いた。
「結人のこと好きだけど……それは違くて……。だけど、好きだし……でも違うから……」
「あきら……」
「──どうしてっ」
涙声で呟いた。
「どうして、そんな風に……」
「ごめん。……でもオレは明が」
「違う」
言葉を遮ってから、痛そうな顔をする結人から目を逸らして俯いた。
「どうしてそんな…………オレより傷ついた顔すんの?」
「っ……」
隣で、息を呑む気配。
それには構わずに言葉を続ける。
「ズルイよ結人は。……オレ……オレが、嫌だなんて言える訳ないじゃん」
「明……」
「ズルイよ……なんで……。……オレより傷ついた顔すんなよっ……」
「あき」
「あんなこと急にされて! ビックリして……っ……どーして嫌じゃないんだよっ」
「…………明?」
思わず悲鳴のように吐いた台詞に、結人の声の調子が変わった。
けれど、それに気付く余裕もなく、
「オレはぁ……今のこの……こーいうのがぁ……好き、なんだよっ。……ゆーとが隣りにいんのなんかもう……当たり前だし……。いない方が……調子狂う、し……もう……訳分かんないっ」
苛々と呟けば、結人がそっと笑うのに気付く。
「……結人?」
ムッとしながら呼べば、ごめん、と呟いてから、くしゃ、と笑う。
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