act.4

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「……一個だけ、聞いていい?」 「何?」  優しくて穏やかで、それでも少しだけ強ばった声に、キョトンと返す。 「……嫌じゃなかったって…………オレが、……その……キス、したの……嫌じゃなかったって……本当?」  恐る恐る放たれた声に、意味が分からずこっくり頷いた。 「ビックリはしたけど……嫌じゃなかった」 「……明」  嬉しそうな声。 「何だよ?」 「オレのこと好き?」 「……だからぁ……もう、そんなんどーでもいーじゃん。……オレらさ……そんなん要らないくらい近いでしょ」 「…………あきら……」 「……好き、とか……当たり前じゃん」 「……明……」  結人の顔中に広がっていく喜びに、照れくさくなってそっぽ向いた。 「……突然キスとか、は……もうヤメて欲しいけど……。……でも、…………一緒にいられないのはもっとヤダ」 「明……」 「……1人、は……やっぱり淋しいよ」 「──明」  ぎゅぅ~っ、と抱きつかれて、驚きながらも。  その肩が震えていることに気付いて、苦笑しながら頭をポンポンと叩くように撫でてやる。その仕草は昔、よく結人がしてくれていたのだと気付いてから苦笑を深くした。 「バカゆーと。……もうオレのこと泣き虫って言うなよな」 「っ……あきら……」  聞こえてきた涙声に小さく笑ってから、 「…………ずっと傍にいたいから、そういう好きは要らない」  もう一度キッパリ呟いて、揺れた肩にそっと触れる。 「──ゴメン」 「明……」 「……でも、ヤじゃないよ、結人。キスも……こーやって、ひっついてるのも」 「……明」 「…………このままでいよ? わざわざ、そういう好きに、なる必要ない」  泣き濡れた瞳を見つめながら呟いてから、一番言いたかった一個を笑って付け足した。 「……結人の好きは……ちゃんと受け取っとくから」  その先に進むのが恐かったのは事実。  今の関係を壊したくなかったのも事実。  だけど。  甘えてたのが一番の理由。  だって、そんなことになると思ってなかったから。  いつまでも、“これから先”を二人で歩いていけると。  バカみたいに信じて、当然だと思ってたんだ。  責めて良いよ。  怒って良いよ。  オレのこと、嗤って良いよ。  だけど。  これってお前のせいでもあるんじゃない? なんて。  思うのは卑怯かな?
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