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お互いの部屋から、お互いの家が丸見え。
洗濯物も、宅急便も。
だから、そういうものなら見慣れていたけれど。
「…………ふぅん……」
ああいうのは、初めて見るから。
だから、こんなに胸がざわざわするんだ。
*****
学生にとって嬉しくないものを3つ挙げるとしたら、宿題とテストと通知表だろう。
微妙な成績の並んだ通知表を、適当に鞄の中に放り込む。
「いいかー。学校に置いといていいのは体育館シューズだけやからな。教科書とかはちゃんと持って帰れよ。置いて帰ったら焼却処分するからなー」
教師の声に方々から非難の声が挙がるけれど、その言葉はさらりと無視されて
「じゃあ、また2学期にな。──解散」
あっさりしたシメの言葉に、教室が色めきだった。
これでとりあえず1ヶ月半は自由の身である。
うきうきとわくわくが混ざる胸の中に、宿題なんて言葉は奥の方にしまい込まれている。
「じゃあヒロ。また遊ぼうな!」
「絶対やで」
「ん。部活頑張れよ」
「おぅ、ありがとうな」
手を振って見送られて、軽い足取りで教室を出れば
「明」
「ゆうと。待った?」
「いや?」
「んじゃ帰ろっか」
廊下で待っていた結人と玄関に向かった。
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