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「なぁなぁ、夏休みどうする!?」
「うーん……どうしよっか」
うきうきした口調に苦笑しながら、自分自身もどうしようもなく楽しみにしていることには間違いなくて。
「海はぁ、もちろん行ってぇ……。でー……あ、そうか。生物のレポートで水族館。……それからー……」
嬉しそうに指折り数えるのを横目で見ながら、想いを伝えた時よりも心臓をバクバクさせながら口を開いた。
「あのさ、明」
「ん? 何? どっか行きたい?」
「……2人で、さ……その……旅行、行かない?」
「旅行?」
キョトン、と首を傾げるのに、そう、と頷く。
「どこでもいいんだ。……神戸でも、姫路でも……淡路でも、大阪でも、京都でも。……2人、だけ、で……1泊旅行」
「……」
「……ダメ、かな……」
黙り込む明を、ちらり、と覗き込めば、悩んでいるのか眉を寄せていて。
ゴメン、やっぱ冗談。忘れて良いよ。
そう言おうとしたのを、顔を上げた明が遮った。
「京都がいい」
「…………場所で悩んでたのね」
「ん? 何か言った?」
嬉しそうに聞いてくるのに、いや、と首を横に振って笑う。
「じゃ、京都に1泊。OK?」
「おぅ」
さっきまで数えていた夏休みプランに、京都を付け足して嬉しそうに笑う明を見ながら、嬉しいような淋しいような複雑な気分でこっそり溜息を吐く。
「なぁ、ゆーと」
「んー?」
「水族館いつ行く?」
「……あぁ、そっか……いつにしよう……」
溜息には気付かなかったらしい明の問いかけにホッとしつつ、夏休みの計画を立てるのだった。
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