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そういえばアイツの通知表を見るのを忘れていたと、不意に思い出して自分の部屋の窓を開け、アイツの部屋を覗き込む。
「……なんだ。いないのか」
目的の姿がないことに落胆してから、ふと目をやったアイツの家の玄関前に。
見慣れない女の姿と、アイツを見つける。
「…………ふぅん……」
今日から──正確には明日から夏休み。告白するのは大型連休の前と相場は決まっている。
「……へぇ……」
乱暴に窓を閉めて、苛々とベットに倒れ込む。
「……なんだよアイツ……」
ぶつぶつと文句を呟いて、ざわつく胸の辺りに手をやってから首を傾げた。
自分は何故こんなにも苛々しているのだろう。
「………………なんだ?」
答えの出ない疑問に、募る苛立ち。
唇を噛んで、落ち着けと言い聞かせながらも、ざわめきは収まる気配もなく
「なんでオレが……」
こんなに苛々するんだろうと、腕で顔を覆った時だった。
こつり、と窓に何かが当たって、そっと体を起こす。
「明?」
くぐもって聞こえる声に、胸が痛くなったような気がしたけれど。
立ち上がって窓に歩み寄って、静かに細く窓を開ける。
「どーしたんだよ?」
「何が?」
「……寝てたから。心配するじゃん」
「別に」
素っ気なく返しながら、アイツの顔をマジマジ見つめ返すことが出来なくて。
「…………何怒ってんの?」
「別に怒ってない」
「怒ってんじゃん」
「怒ってないって言ってる!」
「……明?」
思わず怒鳴り返してから、ハッとして口を噤む。俯いていても、アイツが驚いているのが分かって。
やるせなさに首を振ってから背を向けた。
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