act.5

5/7

285人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
 そういえばアイツの通知表を見るのを忘れていたと、不意に思い出して自分の部屋の窓を開け、アイツの部屋を覗き込む。 「……なんだ。いないのか」  目的の姿がないことに落胆してから、ふと目をやったアイツの家の玄関前に。  見慣れない女の姿と、アイツを見つける。 「…………ふぅん……」  今日から──正確には明日から夏休み。告白するのは大型連休の前と相場は決まっている。 「……へぇ……」  乱暴に窓を閉めて、苛々とベットに倒れ込む。 「……なんだよアイツ……」  ぶつぶつと文句を呟いて、ざわつく胸の辺りに手をやってから首を傾げた。  自分は何故こんなにも苛々しているのだろう。 「………………なんだ?」  答えの出ない疑問に、募る苛立ち。  唇を噛んで、落ち着けと言い聞かせながらも、ざわめきは収まる気配もなく 「なんでオレが……」  こんなに苛々するんだろうと、腕で顔を覆った時だった。  こつり、と窓に何かが当たって、そっと体を起こす。 「明?」  くぐもって聞こえる声に、胸が痛くなったような気がしたけれど。  立ち上がって窓に歩み寄って、静かに細く窓を開ける。 「どーしたんだよ?」 「何が?」 「……寝てたから。心配するじゃん」 「別に」  素っ気なく返しながら、アイツの顔をマジマジ見つめ返すことが出来なくて。 「…………何怒ってんの?」 「別に怒ってない」 「怒ってんじゃん」 「怒ってないって言ってる!」 「……明?」  思わず怒鳴り返してから、ハッとして口を噤む。俯いていても、アイツが驚いているのが分かって。  やるせなさに首を振ってから背を向けた。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

285人が本棚に入れています
本棚に追加