act.5

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「明」 「……何でもないよ、ホントに」 「……嘘」 「嘘じゃな」 「何年一緒だと思ってんの?」  嘘を許さない強さと、労るような優しさに。 「──っ」 「あきら……?」  涙が溢れるのは、どうしてだろう。 「っ……ふ……」 「明!? 何泣いて」 「放っとけ」 「ちょっ、明っ!?」  何か話そうとするのを遮って、窓を閉めてからカーテンを引く。  まだ何か言っていたけれど、無視してベットに倒れ込んだ。  何泣いてんだよ格好悪い。しっかりしろよ。  そんな風に思ってみても、涙は止まらなくて。 「ズルイ……」  そう、ズルイ。アイツはズルイ。  なんでオレがあんな風に理不尽に怒ったのに、アイツはあんな風に優しい声を出すんだろう。 「ズルイ……」 「オレが?」 「──っ!?」  唐突な声に起きあがれば、勝手に部屋に入ってきたアイツが、肩で息をしながらキョトンとしていた。 「な、に……勝手に……っ」 「泣いてるから」 「泣いてないっ」 「嘘吐け。じゃあなんでホッペタ濡れてんの」 「違う」 「明? どうしたんだよ?」  苦笑しながら近付いてくるのに、枕を投げつける。 「ちょっ……明?」 「放っとけよ」 「放っとけない」 「なんでだよ」 「幼馴染みだろ?」 「っ」 「それに」 「……それに?」 「…………オレはやっぱり……好き、だから」 「……ゆうと……」  痛そうな顔と、苦そうな声だと思った。  ──だけど。  あの時チラリと見えた、決死の覚悟をした女の子の顔が浮かんで。 「なんで?」 「何?」 「……あの子……は?」 「あの子?」 「…………お前を、好きな子は……いっぱいいるだろ?」  涙が、出た。  堪えきれなくて、涙が出た。  哀しくて、痛くて、悔しいくらい、切なくて。──切なくて? 「明……?」 「なんで? なんでオレ……っ」 「明?」 「オレっ……だって、オレはぁ……。ヤダよ、オレ」 「何が?」  嫌なんだ。  そういう好きは要らないって言ったけど。  オレの知らない子と、そういう好きになられるのは、嫌なんだ。  今頃気付いたんだよオレは。  バカだね。あんな事言ったのに。  あんな事言って、きっと凄い傷つけたのに。  好きみたいだよ、今更。
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