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「明」
「……何でもないよ、ホントに」
「……嘘」
「嘘じゃな」
「何年一緒だと思ってんの?」
嘘を許さない強さと、労るような優しさに。
「──っ」
「あきら……?」
涙が溢れるのは、どうしてだろう。
「っ……ふ……」
「明!? 何泣いて」
「放っとけ」
「ちょっ、明っ!?」
何か話そうとするのを遮って、窓を閉めてからカーテンを引く。
まだ何か言っていたけれど、無視してベットに倒れ込んだ。
何泣いてんだよ格好悪い。しっかりしろよ。
そんな風に思ってみても、涙は止まらなくて。
「ズルイ……」
そう、ズルイ。アイツはズルイ。
なんでオレがあんな風に理不尽に怒ったのに、アイツはあんな風に優しい声を出すんだろう。
「ズルイ……」
「オレが?」
「──っ!?」
唐突な声に起きあがれば、勝手に部屋に入ってきたアイツが、肩で息をしながらキョトンとしていた。
「な、に……勝手に……っ」
「泣いてるから」
「泣いてないっ」
「嘘吐け。じゃあなんでホッペタ濡れてんの」
「違う」
「明? どうしたんだよ?」
苦笑しながら近付いてくるのに、枕を投げつける。
「ちょっ……明?」
「放っとけよ」
「放っとけない」
「なんでだよ」
「幼馴染みだろ?」
「っ」
「それに」
「……それに?」
「…………オレはやっぱり……好き、だから」
「……ゆうと……」
痛そうな顔と、苦そうな声だと思った。
──だけど。
あの時チラリと見えた、決死の覚悟をした女の子の顔が浮かんで。
「なんで?」
「何?」
「……あの子……は?」
「あの子?」
「…………お前を、好きな子は……いっぱいいるだろ?」
涙が、出た。
堪えきれなくて、涙が出た。
哀しくて、痛くて、悔しいくらい、切なくて。──切なくて?
「明……?」
「なんで? なんでオレ……っ」
「明?」
「オレっ……だって、オレはぁ……。ヤダよ、オレ」
「何が?」
嫌なんだ。
そういう好きは要らないって言ったけど。
オレの知らない子と、そういう好きになられるのは、嫌なんだ。
今頃気付いたんだよオレは。
バカだね。あんな事言ったのに。
あんな事言って、きっと凄い傷つけたのに。
好きみたいだよ、今更。
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