act.5

7/7

285人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
「オレっ……オレ……っ……」 「…………明」  その、オレを呼ぶ声も。  戸惑ったみたいな顔も。  優しい笑顔も。  好きみたい。 「なんで? お前のこと好きな子はっ……いっぱいいて! ……みんなっ……ホントに……お前のことが好きで……っ!」 「明」  優しい声と一緒に、優しい温もりに抱き締められた。 「何回でも言うけど。……オレは明が好きだよ」 「ゆうと?」 「好きだよ」 「ゆう、と……」 「好きだよ、明」 「ゆ、う……と……」  ゆっくりと、手を伸ばした。  躊躇いはあったけど。  この温もりを、手放したく、なかった。 「ゆうと……」 「明?」 「………………好き」 「あきら……」 「…………ごめん。……でも……好きだよ」 「……ホント?」  驚く声に、どうしようもなくて首を振った。 「ごめん」 「なんで謝んの?」 「だってオレ……オレ、こないだ……」 「いーよ」  優しい声に遮られて、背に回した手の平でシャツを握りしめる。 「なんで?」 「だってオレ、好きだもん。……オレだって、思ったから。……こういう好き、欲しいけど……今の好きも……手放したくなかったから。……でも……どうしても……言いたかったんだ。好きって」 「なんで?」 「今の明と一緒だよ」  優しい、でも、弾んだ声。 「明が他の子と仲良くするトコ見るくらいなら……自分の気持ち伝えて、玉砕した方がマシ」  強く強く抱き締められて、ようやく肩に顔を埋めた。 「好きだよ」 「うん」 「大好き」 「……うん」  泣き笑いを浮かべて顔を上げて 「大好き」  そう囁いて、電光石火のキスを贈った。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

285人が本棚に入れています
本棚に追加