act.6

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 ***** 「おわっ……たぁ……」  ばたん、と大袈裟に後ろに倒れる明に、よく出来ました、と笑う。 「何笑ってんの?」 「いや、別に?」 「……なんかムカつくなー」 「ま、いーじゃん。終わったんだからさ」 「ん。これで旅行も心おきなく行けるし」 「……だなー」  一瞬だけ跳ねた胸の奥を、宥めるように笑って見せながら、もうお馴染みになった自己嫌悪を頭の隅に追いやる。 「でも、凄くない? 5日で出来た」 「……オレも手伝って、でしょ」 「…………勝手に手伝ったんじゃん」 「……そう言うこというのは……この口かー」 「いだだだだ」  こんにゃろ、と笑いながら口の端を掴んで、びろーんと引っ張る。  いたいいたい、と笑う顔に、感謝してるの? と聞けば、してるしてる、と笑われて。  手を放してから、ぽんぽん、と頭を撫でてやる。 「ま、なんにしても、よく頑張りました」 「ん。オレ頑張った。やれば出来る子だからね」 「自分で言うなって」  ふはっ、と笑い合ってから。  時計に目をやったのは、たぶん同時。 「…………じゃ、行きますか?」 「……行っちゃいますか?」  堪えきれないワクワクを顔に浮かべる明に、ズキズキ痛い胸を隠して笑い返す。「夏休み最後のスペシャルライブって感じだよね、言うならね」 「そゆこと」  ギター片手に家を飛び出す。  夏の暑さの名残さえ、今は愉しくて。  笑いっぱなしの胸の奥は、悲鳴を上げ続けていた。  もっともっと、君と一緒に。
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