act.7

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 夏休みの思い出。  去年の思い出。  一昨年。  中学、小学校、幼稚園。  全部全部、消えればいい。  お前なんて、知らない。  もう、お前なんて、──知らない。  目が覚めると、見慣れた天井があって。ぼんやりしてると、声が聞こえてきた。 「明。早くしないと遅刻するよ」  優しい声。懐かしい声。愛しい声。  確かこうやって、起こしに来てくれたんだ。  ドキドキしながら布団の中で待ってると、廊下を歩く音が聞こえてきて。  かちゃ、と静かにドアが開く。  次に覗くのは、アイツの、優しい── 「明」 「……」  呼ばれた時に、夢が覚めた。  起こしに来たのは、なんてコトはない。母親だった。  でも一体、誰を待ってたんだろう、なんて上手く働いてくれない頭をフル回転させるけど、霞が掛かったように思い出せなくて。  ぼんやりしてたら、とうとう怒られた。 「新学期早々遅刻したらどうするの」  部屋の隅に転がった旅行鞄に首を傾げながら、慌てて身支度を整えて家を飛び出した。  朝のSHRが終わった後の短い休み時間。  眠りが足りなかったのか、思わずうとうとする所に、健が駆け込んできた。 「明くんっ」 「ぇ? あー……健、おはよー」 「おはよぉ。……って、違うがな!」 「何ー?」 「なんや、どないしたん?」  健の様子に、ヒロまでが近付いてくる。  何? と二人して健に視線を向ければ 「藤崎が転校ってどういうことなん!?」 「えぇっ!? 転校!?」  今度は逆に、二人から視線を向けられる。  同時にクラス中がこっちを向いたような気がしたけれど、苦笑しながら首を傾げた。 「なんのこと?」 「いや……だから、藤崎が転校したって聞いたんやけど……なんでなん?」 「……」  同じ問いを繰り返されて、どう答えていいものかと悩むところにチャイムが鳴った。 「ぁ。健、戻らんでえぇんか?」 「あ、ぁ……うん。戻る」  また来るわ、と去っていく姿を見送りながら、欠伸を噛む。 「ほら、ヒロも自分の席戻んなよ」 「うん……」  席に着くまでに何度も振り返るヒロには、気付かないフリで眠い頭をフル回転させる。  藤崎……って……誰?
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