act.8

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「……明、元気かなぁ……」  濁った空の下で、呟いた。  曇ってるのかと思ったら、これで晴れてるらしい。  明石の空は綺麗だったんだな、とか。  明石にはいつも、潮の匂いがしてたんだな、とか。  離れてから気付いた。  だけど、そんなことは慣れてしまえばどうってことないんだと思う。  どうってことないのは、思い出すと胸がズキズキ痛いのは、もっと違うこと。  あんな風に明のこと置き去りにして、あの後明はどうしたんだろう、とか。  あの書き置きに、気付いてくれたかな、とか。  それより、なにより。  元気かな、とか。  離れてほとんど時間なんか経ってないのに。  もう、こんなにも明のことが。狂おしいくらいに、欲しくて。  ポケットをごそごそ探って取り出した、空色の石。  たぶん、割れた瓶の欠片が、川の流れで丸くなって出来たであろうそれを、空に透かし見る。  これをくれたのは、明だった。  小さい時とかじゃない。旅行に行った時、我慢出来ないみたいな顔した明が、いきなり靴を放り出して、ばしゃばしゃ川に入って行った時に見つけて、オレにくれた。 『ゆーとー!!』 『なに、どうした!?』 『あげるー』 『へ?』 『旅行に誘ってくれたお礼』  ぽいって。投げられて。  慌てて掴んだ手のひらに。乗ってたのがこれ。  暑さも忘れるほどの涼やかな景色と。太陽みたいに眩しくて、だけど見ずにはいられないくらい、元気な明の笑顔と。  思い出して、ゆっくりと笑った。  楽しくて、大切で、大事で。  そういえば、この石の色はあの日の空の色に似てる、なんて思ってから大事に大事にポケットにしまい込んだ。  離れても繋がってる心。  オレは、そんな子供だましを切に信じてたんだ。
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