act.9

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 それにしたって住所とか、それが無理なら連絡先とか。  教えていってもバチ当たらんかったんとちゃうん?  オレら、知らんで。そこまでフォロー出来ひんよ。  全部全部君が悪いとは言わへんけど。  でも、それでも。  オレら、知ってるもん。  あの子がどれだけ、傷付いて、哀しんでたか。  あの子が転校していった後のざわざわは、中間テストが始まるくらいまで続いてて。  その間中、明くんは可哀想なくらいにみんなからの質問攻めにあってた。  朔弥くん曰くの総口撃。  でも、明くんは泣きもせんと。それこそいつも通りに笑いながら。 「だからぁ、オレに聞かないでって」  そうやって笑ってた。  その顔は、誰も何も聞けなくなるくらいに、壁を感じる笑顔やった。  性懲りもなく近付いてくるヤツらを蹴散らすためにオレら三人は、涙ぐましいくらいの努力をした。って言うてたら、健に大袈裟やってどつかれた。  でも、明くんは相変わらず、笑ってた。 「オレ気にしてないんだから、いいよ?」  それは、構わんと放っとけ、って。  言うてるみたいに見えた。  独りにしてくれって、言うてるみたいにも見えた。  でも、それに怯んだら負けやと思った。  ホンマに明くんを一人にする訳にはいかんと思った。  傷付きやすいのに、それを隠して一生懸命に笑う子。可哀想なくらいに、強がる子。  負けず嫌いなんはえぇけど、もうちょっと、オレらにも頼って欲しいな、って思ったりもしたけど。  そう言う健気な強さに、あの子は惹かれたんかもしれへん。  そう思ったら、ちょっと照れた。  あの子の、明くんを見る目を思い出したら、訳も分からんけど、照れた。  だってもう、蕩けるんと違うかなって。思うくらいに優しい目をしてたから。  そんなあの子に、無条件に甘えてた明くんも、その目はいつもよりも柔らかい色をしてた。
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