285人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
それにしたって住所とか、それが無理なら連絡先とか。
教えていってもバチ当たらんかったんとちゃうん?
オレら、知らんで。そこまでフォロー出来ひんよ。
全部全部君が悪いとは言わへんけど。
でも、それでも。
オレら、知ってるもん。
あの子がどれだけ、傷付いて、哀しんでたか。
あの子が転校していった後のざわざわは、中間テストが始まるくらいまで続いてて。
その間中、明くんは可哀想なくらいにみんなからの質問攻めにあってた。
朔弥くん曰くの総口撃。
でも、明くんは泣きもせんと。それこそいつも通りに笑いながら。
「だからぁ、オレに聞かないでって」
そうやって笑ってた。
その顔は、誰も何も聞けなくなるくらいに、壁を感じる笑顔やった。
性懲りもなく近付いてくるヤツらを蹴散らすためにオレら三人は、涙ぐましいくらいの努力をした。って言うてたら、健に大袈裟やってどつかれた。
でも、明くんは相変わらず、笑ってた。
「オレ気にしてないんだから、いいよ?」
それは、構わんと放っとけ、って。
言うてるみたいに見えた。
独りにしてくれって、言うてるみたいにも見えた。
でも、それに怯んだら負けやと思った。
ホンマに明くんを一人にする訳にはいかんと思った。
傷付きやすいのに、それを隠して一生懸命に笑う子。可哀想なくらいに、強がる子。
負けず嫌いなんはえぇけど、もうちょっと、オレらにも頼って欲しいな、って思ったりもしたけど。
そう言う健気な強さに、あの子は惹かれたんかもしれへん。
そう思ったら、ちょっと照れた。
あの子の、明くんを見る目を思い出したら、訳も分からんけど、照れた。
だってもう、蕩けるんと違うかなって。思うくらいに優しい目をしてたから。
そんなあの子に、無条件に甘えてた明くんも、その目はいつもよりも柔らかい色をしてた。
最初のコメントを投稿しよう!