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この子らは、ずっと一緒なんやろうなって、思ってた矢先の転校で。訳解らんのに。
加えて明くんは、全部忘れてた。
全部、言うたら語弊がある。
ただ、あの子とずっと一緒におって、愛し愛され、誰よりも強い絆を持っていたことを、忘れてた。
朔弥くんが言うにはたぶん、そうせな生きていかれんかった、らしい。
「自己防衛、だと思うよ」
「自己防衛?」
「何それ」
「………………保健の時間に習ったでしょ」
「……そうやっけ?」
「オレ保健の時間寝てるしなぁ」
「……」
大袈裟に溜め息吐かれて、健と二人で縮こまるしかなかった。
朔弥くんとおると、自分のバカさ加減を改めて気付かされる。
大まかに説明してもらった後で、とりあえず開いてみた保健の教科書。確かに授業でやったはずやのに、初めて読むみたいな文章を、健と二人で顔付き合わせて読んだ後で、納得した。
自分を保つために、全部忘れた。
そう思うと、明くんの笑顔が痛々しく思えてしょうがなくて。
だからもう、明くんを絶対に守らなアカンと思った。
今思うと、もしかするとちょっと恋やったんかもしれん。
そう言ったら、健に本気顔で止められた。
「ヤメとけ。藤崎に知れたら、お前……本気でボコられんで」
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