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いつからだろう。自分達がこうして、2人でひとつの曲を作るようになったのは。
その少し前から、2人で駅前に歌いに行ったりしていた。2人で何度も同じ曲を繰り返し練習して、駅前に行っていたのだ。
その内に他人の曲じゃ物足りなくなって、試しに作ってみたらこれが楽しくて。
2人でやり始めると、もっと楽しくなって。
元々仲の良かった幼馴染みだったけれど、その時からきっと、絆はもっと強くなった。
けれど、良いことばかりじゃなかった。
明と一緒の時間は、嬉しくて、同時に辛くて苦しかった。
明が好き。
そう気付いたのはいつだっただろう。
男同士で、大切な幼馴染みで。
想いに気付いたとき、同時に恐怖さえ覚えた。
この想いが知られたら、もう二度と傍にいて笑い合えなくなる。
隠すのに必死だった。
それでも何も知らない明は、前と同じようにじゃれついてくる。
距離を置きたいと思ったことさえあったけれど、どうしても離れられなかった。
「……あぁ……これがいいんじゃない?」
ぴっ、と問題用紙を飛ばせば、ひょい、と受け取った明が嬉しそうに笑う。
「そう言うと思った」
満面の笑み。
痛くて痛くて。
でも嬉しくて──大好き。
たとえ想いを伝えられなくても、傍にいられたらそれでいいと、自分に言い聞かせていたというのに。
そんな儚い願いすら無視されるようだと、悔しさに唇を噛みながら。
「ルーズリーフ1枚ちょーだい、書き写しとく。明日テスト返ってくるから問題いるし」
楽しそうに言う明に、勝手にとっていいよ、と笑い返す。
全てが欲しいと、望んだワケじゃない。
そんな我が侭を言った覚えはない。
なのに、全て奪われるの?
運命には、逆らうことさえ許されない?
自分の無力さに、腹が立った。
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