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「………………あれ?」
ふと。
後ろの方で声がしたけれど。気にせず歩き出そうとした行く手を、二人組に遮られる。
「藤崎?」
「は?」
何だよ、と思って睨み付けようとする前に、そんな声。
キョトンと見上げた先で、なんとなく懐かしい顔。
「………………健と……ヒロ?」
呟けば、二人は。
本当に嬉しそうな笑みを顔に浮かべた。
「藤崎やんかっ、何してんのんこんなとこで!!」
「いや、帰ってきた」
「マジでぇっ!? うわぁ、ビックリしたなぁ」
「ホンマやで。おっとこ前なったなぁ」
なんだよそれ、なんて笑い返す。
以前と変わらない彼らが嬉しくて、凝り固まっていたらしい心が解れていくのが解る。
「帰ってきたってことは……大学はこっち受けたとか、就職でこっち来たとか?」
「うん、大学。さっき合格発表みてきたんだよ」
「おっ、マジで。おめでとうさん」
うん、ありがと、と笑ってから。
ふと、思いついて聞いてみる。
「明、元気?」
「……そうや! 自分なんでやねん」
「は? 何、急に」
「転校するて、なんでさっきに言わへんかったん。めっちゃビックリしたんやで」
オレの質問には答えないのかよ、なんて苦笑しながら、たった一言聞いただけで暴れ出した心臓に、落ち着けと言い聞かせる。
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