act.10

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「あぁ、うん……だってさ……なんか……しんみりするの、ヤじゃない?」 「アホか。もう、君はホンマにアホですね」 「…………なんだよそれ」  さすがにムッとしながら言ったけれど、二人して顔に影を落とすのが解る。 「…………なんかあった?」 「……明くん……めっちゃ傷付いてたんやで」 「……」 「……明くんな……。……たぶん、ずっと……泣いてたんと、違うかな……」  二人の言葉の一つ一つが、痛くて痛くて仕方なかった。 「……笑ってたよ、明くん。ガッコでずっと。……なんで藤崎転校したんやって、女子に囲まれながら。知らんって、笑っとった。……泣きもせんと、怒りもせんと。もの凄い綺麗に笑っとった」 「オレら、何にもしてあげられへんかった。……あの後明くん、独りだけ浮いてもて……。……オレらが話しかけたら、前みたいに笑ってくれるんやけど……基本的に独りで行動してたし……。……いつか壊れるんちゃうかって……心配したくらい」  何も言えなかった。  言う資格なんてナイと思った。  言い訳も、何も。  する気にもならなかった。  胸が痛い、だなんて傲りだと思った。  エゴだった。  もう、家に帰りたいとさえ思いながら、その弱さをふるい落とす。 「…………あきら、は……。……今日は、家、かな……」  震えてるのを隠すことさえ出来ずに聞けば、たぶんそうちゃうか、と二人が呟く。  会った時の明るさなど何処かに吹き飛んで。  暗い表情のままで別れる、その間際に 「……でも、やっぱり……藤崎に逢えて、嬉しかったわ。……これからも、逢えるんやったら、たぶん、もっと嬉しい」 「……健……」 「オレもやで」 「…………ありがと。オレも、嬉しいよ」  そんな、泣きたくなるようなセリフを呟き合った。  *****
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