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「あぁ、うん……だってさ……なんか……しんみりするの、ヤじゃない?」
「アホか。もう、君はホンマにアホですね」
「…………なんだよそれ」
さすがにムッとしながら言ったけれど、二人して顔に影を落とすのが解る。
「…………なんかあった?」
「……明くん……めっちゃ傷付いてたんやで」
「……」
「……明くんな……。……たぶん、ずっと……泣いてたんと、違うかな……」
二人の言葉の一つ一つが、痛くて痛くて仕方なかった。
「……笑ってたよ、明くん。ガッコでずっと。……なんで藤崎転校したんやって、女子に囲まれながら。知らんって、笑っとった。……泣きもせんと、怒りもせんと。もの凄い綺麗に笑っとった」
「オレら、何にもしてあげられへんかった。……あの後明くん、独りだけ浮いてもて……。……オレらが話しかけたら、前みたいに笑ってくれるんやけど……基本的に独りで行動してたし……。……いつか壊れるんちゃうかって……心配したくらい」
何も言えなかった。
言う資格なんてナイと思った。
言い訳も、何も。
する気にもならなかった。
胸が痛い、だなんて傲りだと思った。
エゴだった。
もう、家に帰りたいとさえ思いながら、その弱さをふるい落とす。
「…………あきら、は……。……今日は、家、かな……」
震えてるのを隠すことさえ出来ずに聞けば、たぶんそうちゃうか、と二人が呟く。
会った時の明るさなど何処かに吹き飛んで。
暗い表情のままで別れる、その間際に
「……でも、やっぱり……藤崎に逢えて、嬉しかったわ。……これからも、逢えるんやったら、たぶん、もっと嬉しい」
「……健……」
「オレもやで」
「…………ありがと。オレも、嬉しいよ」
そんな、泣きたくなるようなセリフを呟き合った。
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