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思い出さなかった記憶が蘇った途端に。
世界がキラキラして見えた。
隣りにアイツがいるって、想った途端に。
胸の中が温かくなった。
全部許せる訳じゃないけど。
全部憎める訳じゃない。
だってオレは、結局──
*****
泣きやんだ後で明は、真っ赤になって腫れた目を、隠すように俯きながらポツリポツリ話し始めた。
オレが居なかった、3年間のことを。
「オレね、結人。……この3年間、結人のことなんて、ほとんど思い出さなかった」
「……ぇ?」
「……なんて言うのかな……。……結人は、結人じゃなかった」
「……」
意味解んないよな、と呟いた明は、だからぁ、と。
オレが好きだった話し方で、考え考え口を開いた。
「結人は、ただ単に、知り合い。そうやって思ってたんだ。今考えると、自分でもオカシイなって思うんだけど。……幼馴染みの結人じゃ、なかった」
腕の中にいる明の髪を梳きながら、それで、と続きを促す。
「……結人が……独りで行っちゃった朝……。……オレ、決めたんだ」
「何を?」
「もう絶対、結人のことなんか思い出してやるもんかって」
「……」
強い声だった。
哀しそうな目だった。
「……だけどみんなに、藤崎転校したって本当かって。もうウザイぐらい聞かれて。……初めは誰のことか解んなかったんだけど、朔弥くんに聞かれて、思い出した。あぁ、そっか結人だって。……でも、その時も。思い出せたのは、結人がいたってことだけ。……オレの幼馴染みだとか、そういうのは、全然。……たぶん、思い出したく、なかったんだと思う」
「ごめんな」
そう囁いたら、ゆっくりと、明が首を横に振った。
「解ってた。結人が悪いんじゃないって、ホントはちゃんと、解ってたんだ。……だってあの頃、考えてみると結人、変だったもんね? 時々ふっ、て。淋しそうな目したりしてた。……ホントは、結人も辛かったんだろうなって、解ってるよ。……だけど、あの時はもう、全然そんなこと考えられなかった」
そんな余裕、なかった。
付け足した後で、明がそっと溜め息を吐く。
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